中部経済新聞に連載中
「プロしか勝ち進めない時代」
〜高収益企業再生への道〜

     2003年3月6日掲載 

プロしか勝ち進めない時代 「高収益企業再生への道」

(5)再生へのポイント

中小企業が高収益企業に向けての再生に取り組もうとしても何をどのように取り組んで行けばよいのかかが、ハッキリ見えていないのではないだろうか? 
もし、具体的に見えていたらこれほどまでに生産性を悪化させることはなかったのではないかと思われるのである。
また、生産性向上への取り組みは、勝つ為の経営戦略であるから達成できた企業からの情報発信が乏しいことにも起因しているのである。
車や電子機器関係等の企業(雇用構成比で10%)では、労働生産性は「アメリカの120%」である。残り90%の企業は、「63%」なのである。
(マッキンゼー「日本経済成長の阻害要因」)これは、閉鎖された市場のなかで国内企業のみとの競争に安住してきた結果である。
消費者を保護する為には、企業のモラール等を高める必要があるということで同業者の組合等が結成されてきた。これが逆に、提供者側に有利な市場を形成する結果となったのである。
競争は、自由主義世界では当たり前のことであるにも関わらず、独特のメカニズムが日本市場の中で形成されていたのである。
これが、また、海外企業の日本進出に大きな障壁ともなっていたのである。
このような状況下では、厳しいコスト競争が生まれはずがなかったのである。
だから、提供者はそれほど生産性をアップさせる必要もなかったのである。
言われたものをただ提供することに専念すればよかったのである。
だからほとんどの経営者は、生産性(労働生産性)のアップについて取り組む必要もなかったのである。
いや、気づけなかったのである。ひたすら、大量の注文に応じるための仕組み作りに専念しておればよかったのである。
それが、表向きの労働生産性の向上に寄与していたのである。
市場が開放された現在、コストを引き下げないと勝ち残れなくなってきたのである。
労働生産性向上には、@労働者の削減 A一人当たりの生産性向上 B非生産部門のコスト削減 C生産の仕組みを変える(付加価値の低い商品と付加価値の高い商品それぞれについて)D商品開発 E営業部門と技術部門の改革 等が主な課題として挙げられるのである。
当面達成しなければならない目標値は、現在の1.5倍なのである。5%や10%のコストダウンでは無いのである。
そうして、到達までの時間的な余裕が、今の日本の中小企業には無いのである。
待っていてくれないのである。思いつきや現場(作業者)からの提案だけに頼っていては、達成させることは極めて難しいのである。
勝ち残るための経営課題として、腰をすえて取り組んで行かねばならないのである。
更に、各プロセスに於ける付加価値の評価をどうするのかも大切なことである。従来は、生産部門のみが付加価値を生むように思われてきたが、そうでは無いのである。
また、企業間の仕組みについても評価・検討し、「新しい仕組み」を創造して行かねばならないのである。
それには、まず、現状分析が必要である。
そうして、トップ自らが先頭に立ってやりきってゆく必要があるのである。これも当たり前のことなのである。

   2003年3月5日掲載 

プロしか勝ち進めない時代 「高収益企業再生への道」

(4)お客様を知る

いまさらお客の情報を知る必要があるのか? 
わが社は何十年もお取引いただいているお客様で売上の大半を占めている。
その上、社長や企業の中身も知り尽くしている。この売上を上げることで日々かけまわっている時期に、そのような悠長なことをやっている時間など無い。
全く時間の浪費だ。
これが偽らない経営者の気持ちではないだろうか?この気持ちが市場でライバルと戦い、勝利するということから逃避させているのである。
そうして経営者の甘えと自己満足を引き起こしているのである。
その結果、ライバルに注文をごっそり持っていかれているのである。
これは数字の結果しか評価していないということと同じなのである。
市場で戦うための情報は市場に出て、お客様の行動を見ながらニーズを察知し、吸収する以外に方法はないのである。
本来、経営者として戦わねばならないことができていないことの言い訳材料に「デフレ」を利用しているとすれば、業績悪化は当然の結果である。
この時期、好調な企業は二割以上いるのである。
悪い例ばかり見ていれば業績が悪くなるのは当然である。
挑戦目標を立てれば、目標必達に向けての顧客情報の大切さが見えてくるはずである。
まず、何に気がつかなければならないかである。
それは、お客様は購入した商品を使い、経験を積み、知識も提供者より上になっているということである。
顧客はニーズを満足させてくれる商品の仕様を常に持っているのである。
だから、提供者は顧客の要望に敏速且つ的確に対応できないと顧客から見放されてゆくのは、市場の原理から見て当然のことである。
もう一つは、現在使っている商品から得られた知恵や情報をベースにして新しく創造したニーズを満足させるモノを創造し、提供してくれる「しくみ」を求めているのである。
この場合は、顧客の頭の中にあるイメージをどう抽出し、形のあるものに創出してゆくかの能力と知恵が必要になってくるのである。
商品至上主義の時代は、販売促進ツールと言えば「カタログ」で十分であったのとは大きな様変わりである。カタログ商品については、お客も営業からその商品の機能等について説明を受けなくても顧客が持っている知識や経験から選択することはできるのである。
だから、顧客は、@提供速度が最速で Aコストミニマムの仕組みを提供者側に求めるのは当たり前のことである。
ネットビジネスが普及してゆくのも当然のことである。
提供者は、顧客の頭の中にある情報をどう形のあるものに引き出し、そのニーズを満足させる「かたち」で提供して行けるかが勝つ為の重要なポイントである。
それには、顧客との信頼感が大切である。
顧客の頭や胸の中が「商品情報の宝庫」なのである。
商品さえあれば売れた時代は、随分昔のこと、今は、顧客主導型時代である。顧客は自分のニーズを満足させてくれる提供者を求めているのである。そ
のニーズを引き出せるのは、感性と知性の豊かな経営者しか存在しないのである。
これも高収益企業への再生に向けた「しくみ作り」としては、当たり前のことなのである。

2002年3月4日掲載 

プロしか勝ち進めない時代 「高収益企業再生への道」

(3)ライバルを知る

敵を知らなければ、勝つための作戦は組めないのである。
例え、ライバルに一度勝っても、次の戦いで勝てるという保証は何もないのである。
営業マンの数字が安定しないのはここに原因しているのである。
トップがライバルの情報をひたすら営業マンに頼っていては、売上の数字が上がらないのは当然である。
ライバルに勝つには、ライバルを見つけ出し、その活動状況を分析することである。
ある薬品問屋の社長と会長が、ライバルと顧客との関係やライバルの活動状況を入手するため、月一回、得意先の病院を訪問し、情報入手のためにまる一日その病院にいるのである。情報を入手するには、これほどの戦いと忍耐が必要なのである。
その結果、売上は順調に伸びているのである。
経営のトップは、感性や理性が社内のだれよりも上である。
従って、市場の変化に気づき、アクションを起こせるスピードは、社内のだれよりも速いはずである。この戦いは、あくまでも市場からの情報入手に徹すべきである。
日産のゴーンの5か条の一つである「トップの一貫した行動」そのものである。
だから、受注活動を情報の入手活動と並行してはならないのである。
受注活動はあくまでも担当者に任せるべきである。ところで、ライバルの情報には、このような「形で見えるもの」と、「見えない情報」がある。
さらに、ライバルは従来の国内の同業者のみでなく、異業種からの参入や多国籍企業も加わってきているのである。
ライバルを見つけ出すことは、勝ち進むために必ず行って行かねばならない戦いなのである。多国籍企業のなかには、中国系の企業も増えてきている。
そうして、彼らは自社の商品の販売のみに拘らず、日本の企業が持っている技術資産や顧客資産を自社の戦略に活用する目的で資本参入を図ってきているのである。
今まで特に気をとめていなかった企業がある日突然強力なライバルに変身してくることも十分予想されることである。プロの経済社会の実態そのものなのである。ライバル情報をどう把握できるか? 
それが勝ち進む上で重要な経営課題なのである。
金融機関や情報会社等の情報のみに頼っていては勝てないのである。
その様な情報はライバルにも提供されているのである。自ら市場に出て情報を入手することが勝つための秘訣なのである。
ワールドの社長は週末、必ず、市場に出て情報の入手に勤めているのである。
カゴメの伊藤社長は、調査会社任せの市場調査は受け入れないといわれている。
汗を流して入手した調査しか認めないと言われているのである。ライバルの情報入手にも、顧客に仕掛けて初めて入手できるのである。
この戦いにもお客様を思いやることが不足していると入手は難しいのである。
商品のライフサイクルも極めて短くなってきている。ライバルの情報入手にもっともっと真剣に取り組んで行くことが勝つ為に必要なことなのである。
ライバルを知って初めて戦い方が見えてくるのである。市場は「取る戦い」から「勝つ戦い」へと大きく変化している。この情報入手の戦いも勝つためには当たり前の事なのである。

2002年3月1日掲載 

プロしか勝ち進めない時代 「高収益企業再生への道」

(2)まず、自社をよく知る

ライバルやターゲットばかりに目がいっていても、自社の本当の力が解かっていないと、勝てる戦略が組めないのである。
だから、予算があっても実績がついてこないのである。
今、プロ野球の春のキャンプが始まっている。
かれらは、どのようなキャンプをやっているのであろうか、また、その目的・目標は、なんだろうか?
実に、それはハッキリしているのである。
選手は、まず、チームでNO.1に、NO.1の選手は、日本でNO.1になることで厳しい練習に耐えているのである。
自分との戦いである。 経営者も同じなのである。
チームは、当然、優勝である。
選手一人一人やチーム全体の力を他のチームと比較・分析し、監督は勝つ為の今シーズンの戦略をまず作り上げるのである。
次に、それに必要な力の目標を各選手に持たせ、キャンプを行っているのである。
巨人の原監督はNHKのインタービューで、今年は、松井がいないから「どう、こう」ではなく、現在の選手でどう戦い・優勝するかのチームつくりがいま最も大切であるといっている。
さて、日本の経営者は、このような戦いを行っているのであろうか? 
合理化やIT化については、企画会社やコンサルタント会社に丸投げ、人材の育成では、外部の研修機関や講師に任せっぱなし、これでは、勝てるわけが無いのは当然である。
赤字になってもしかたがないことである。
バブルが弾ける直前までは、日本の市場は閉鎖され、国や業界の縄張りで、ガッチリ守られていたので、お客の言われるままにやっておれば、収益を上げることが出来た。
所謂、経営者としてやらねばならない当たり前ことの内のほんの一部をやっておればよかったのである。
言ってみれば、マイナーリーグで戦っていたのである。
だから、多国籍企業を相手に戦わねばならない今の日本の土俵の上では勝つことが難しいのである。
その結果、68%も企業が赤字になっているのである。
デノミであろうとなかろうと、企業の収益を上げなければならない。
これが、社長の任務である。
だから、経営者はいかなる環境下でも黒字経営を続けるという「当たり前の事」をやりきらねばならないのである。
この為には、まず、自社の力を十分に知ることである。
それには、総合評価から取り掛かることである。
@
成長性 A生産性 B収益性 C安全性(表1 参照)について、分析すること。【*表は中部経済新聞をご覧ください。】
なかでも、労働生産性(一人あたり)は、今の日本の企業で最も重要な評価項目なのである。
分析が終われば、TKCのデーターを税理士や会計事務所から取り寄せ、トップ自ら評価することが必要である。そうして、経営者自らが自社の本当の力を知ることである。
次に、成長力分析である。成長力については 
@人件費増加率 A人員増加率 B製造(工事)原価増加率 C販売管理費増加率 D営業原価増加率 E営業外収益増加率 F固定資産増加率 G総資本増加率 H売上高増加率 I税引き前純利益増加率 J自己資本増加率を分析し、自社を正しく評価することである。これは、経営の基本であり、当たり前のことなのである。

     2003年2月28日掲載 

プロしか勝ち進めない時代 「高収益企業再生への道」
 (1)当たり前の事をやりきる

日本の企業の68%が赤字であると昨年末に報道された。経営者がこの報道をどのように受け取ったのだろうか?
自社も厳しいがほとんどの企業が赤字なら、まあ・まあ・・・と、思ったか? 
これはビッグチャンスだと思ったかでは、企業に取って大きな違いがでるのである。
日本の企業の90%は、アメリカの企業に比べ、生産性が40%近くも悪いという、マッキンゼーのデーターから見れば、68%の企業が赤字であるというのは、当然のことで、まだ低いと取れるのではないだろうか。
では、日本の企業は皆ダメになるかといえば、そうでは無いのである。
40%も生産性が悪いと言うことは、ムダが如何に多いかということである。
でも、経営者側から見れば、合理化も進み、IT化もやってきた。
やることは、全てやってきて、もうやることは無いと思っているのに、これ以上何をすればよいのかという、「ぼやきの声」が聞こえるような気がする。
でも、鋳物業界や部品加工業、また、金型屋でも対前年比110%以上も業績を伸ばしている企業が存在している。
これも紛れも無い事実である。
経常利益が二桁の企業も存在しているのである。では、このような高収益企業と赤字の企業とは何がどう違うのだろうかと考えてみると、答えは簡単である。
それは、「当たりまえのことを、当たり前のようにやっている」か、どうかである。
「当たり前の事を当たり前にやりきる」それが、まさに、プロの経営者なのである。
では、当たり前のことを当たり前にやるとは、いったいどのような経営手腕なのだろうか? 
ここで、日産を今年度で無借金企業に改革した、カルロス・ゴーンの再生の五か条について見てゆくことにする。
@明確で判りやすいビジョン Aトップの一貫した言動 B社内コミュニケーションの徹底 C行動を起こさせる動機付け 
D成果に対する正当な評価(5か条については、日経ビジネスより)どの項目を見ても実に当たり前のことである。
もう一つ、松下電器の中村社長の戦いの一部を見て見ることにする。
それは、徹底した現場主義なのである。例えば、営業マンの訪問回数を従来の1.5倍にし、店頭での販売に積極的に関与させ、顧客のニーズを創出し、それが新製品の開発の情報となって、無駄な機能を省いた商品の誕生を促し、それらの活動が市場で受け入れられ、業績が向上してきたのである。
これも考えてみれば当たり前のことである。このような顧客を満足させるという経営戦略は、何も新しいことではなく、江戸時代に越後屋の社長がなくなり、三重で金融業を営んでいた社長が、兄弟がなくなったことで、江戸に行き、越後屋での店頭販売の状況や町民のニーズをいち早くキャッチして、反物を切り売りするというビジネスを手掛け、越後屋を業界のトップにしたのと同じである。
高収益企業への再生には、まず、トップが当たり前の事に気づくことである。